まつどとか
千葉北西部、
        くさのめも
      周辺ぷち植物誌。
© T. Codd

ヒメジソ

ヒメジソ
シソ科
イヌコウジュ属
Mosla dianthera (Buch.-Ham. ex Roxb.) Maxim.

花は唇形。4裂し上下左右に別れる。上片は非常に浅く窪み一応更に2裂と捉えてよいと思われる。
幅3mから3.5mm程度、特に大きいもので4mm程度で、イヌコウジュより一回り大きい。草丈は30cmから40cm程度。
湿地状の土壌近辺によく生えるが、湿地そのものより湿地と普通の草地の境界域(際・縁)に多く生えている。水際にも生えているがやはり土が水上に露出していて普段は土になっている部分に生えている。
※萼の比較についてはイヌコウジュの記事を参照(比較用の図あり)。


※なお、きちんと見ている人なら、花のアップはともかく他の部分も写っている写真ではいちいち細部のことを考えなくてもイヌコウジュとヒメジソとの「二択」で間違うことはありえないので、両者が分からないならもうちょっと植物をよく見て付き合うことをお奨めする。…。

性質の偏り

形態はかなり多様だが、性質に一応複数の偏りが見られる。混生していてもそれぞれの性質を主張して生えているのが普通なので、違いがすごく目立つ。
●見た目では、一応大きくまとめてしまえば以下のふたつになる感じ。
【A】:色が濃く質はしっかりして無骨、全体無毛から少毛タイプ。河川敷等で陽光地・裸地に多く、寒さと日当たりの都合で赤く変色しながらも真冬まで吹きさらしで咲いている。葉の鋸歯はBタイプより寝ている感じ。同じ河川敷裸地でもごろごろした砂利地にはこちらしか見られない。
【B】全体しっとり繊細タイプ、林縁の湿った部分等に多く、少し柔らかめ。萼と葉裏の脈状が極端な多毛のものとちょっと多めのものとAタイプ同様少毛のものがある。環境の都合で緑一色の場合が多いが、陽光地ではこちらも染まる。Aタイプと異なり、真冬には見かけない。葉の鋸歯ははっきりと大きく、外に開き気味で目立つ。葉形はAより広めで広卵形が多い
菱形の葉を持つものもこちらの質のものが普通。
(シラゲヒメジソかそれに近いものか、もしくはそれと関係のある(交雑)ものかもしれない。)

●そして、これらの集合と完全には一致しない形で匂いでも大きく二つに分かれる。
【あ】:無芳香で普通の草。
【い】:良い香りがする。ペッパービーフステーキとコーラガムとシソの香りを合わせたような感じで、匂いの配合バランス自体はまちまち。どれもよい香り。ただしイヌコウジュ(これは芳香というよりかなり臭い)のようにそばによれば匂うわけではなく、葉を傷つけたりしない限りは感じない。
見た目の【A】タイプには【あ】が多めで【い】もある。【B】タイプには【い】が圧倒的に多く、無臭の【あ】はほとんどない。

国内の図鑑等でまともに記載されているこの属の種(変種等も含む)はイヌコウジュ・ヒメジソ・シラゲヒメジソ(ヒカゲヒメジソ)・ヤマジソ程度。他にもホソバヤマジソ等いくつかあり名前だけであれば10近くあるようだが、まともな区別のできるレベルの情報が存在するのは前4種で、それらについても特徴の記述や検索表もそれら4種間でのもので、あまり細かなことは書かれていない。しかもシラゲヒメジソに関してはヒメジソに似た毛の多いもの、程度の記述。
毛の量等は群落で大きく異なるのが植物ではかなり普通のことなので、もっと厳密な特徴の記載がない限り同定は不可能と思われる。
シラゲヒメジソはヒメジソの変種とするものやMosla hirtaという別種とするものがあり、ヒメジソ自体も学名が変わったりと色々流動的で現時点でどう捉えられているかは不明。

古い論文を見るとアジア圏に多数の種があり和名もついている(ニセヒメジソ・ヒメジソダマシ・シラゲヒメジソモドキ等といった名も見られる)ようなので、国内のハーバリウムに多数あると思われるヒメジソと同定されているものが全てヒメジソであるか自体にかなり疑念がある。私には見ることができないので実態は分からないが。

結局のところ、私同様一般レベルの文献にしかアクセスできない大多数の人は、少ない特徴記述のヒメジソにマッチしてしまうものは疑いなくすべてヒメジソとしていると思われる。

共通の特徴

花は基本的にイヌコウジュよりひとまわり大きく幅で3.5mmから4mm程度ある。ただし花期が結構長く、秋深くなってから咲くものでは同株内でも異様に小さくイヌコウジュと同サイズで撮影しづらいものになる。色も赤紫が強くなり、夏の花と大きく雰囲気が異なるようになる。
夏から秋の初めあたりまでの花色は白ベースで部分的に薄赤紫に染まるだけで撮影の仕方によってはほとんど真っ白になる。
時期だけでなく、同株内でも日当たりのよい位置にある花序では染まりが強く、日陰ではほとんど白いままだったりと、紫の発現具合が極端に環境に左右されている場合も多い。
4裂する花冠の下片の内側に2列状に黄色い斑点が並ぶ(※花冠の紫の発現が強いものでは橙から薄紫になっている)。なお、イヌコウジュにも同様の黄色い斑点がある。
オシベは4本あるが下片に張り付く2本は、葯が退化している。
下片先端側のぎざぎざはないか弱いものが多いがかなりまちまち
苞葉はイヌコウジュ同様で極めて小さく線形か披針形で、ほとんど小片にすぎない感じ。せいぜい花柄と同じくらい。

葉と茎

葉は葉柄含まず3cmから4cm程度。
葉の表面はイヌコウジュのように粉っぽい微毛が密生することはない。また、腺点から浮いていると思われる黄色いきらきらもない
代わりに点状にぼつぼつ突起になっていてやや目立つ。
主脈・側脈ごとに目立ってでこぼこしているものが多く、イヌコウジュのようにフラットな感じではない。
鋸歯数は各種形態のものの平均的な話ではイヌコウジュと比べれば少なめでかつやや高めなので、荒くて粗い印象はある。
基部はくさび形から弱い円形で、基部側が結構長く最太部から先端への辺が全体的に湾曲が少なめのものも多く、やや菱形気味に見える場合も多い。ただし群落でまちまち。
(なお、イヌコウジュは幅の変化の仕方から長楕円ベースで基部の丸さが目立つ。)
短絡して「ヒメジソは菱形」とあっさり書いてある場合もあるが、極めて変化に富み、菱形のものもわりとあるという程度
花序のすぐ下の葉はイヌコウジュでは幅が広く長さより広くなるものが頻繁に見られるが、 ヒメジソでは逆に細く披針形気味になり、サイズが大きくてもほとんど全縁で雫のような感じになるものが多い。(そうなると側脈が横へ伸びず前方へ伸び平行脈に近くなる。)
茎はH鋼状になった4稜に下向きの少し屈曲した短い毛が散生するが面にはほとんど生えない
節部分には環状に毛が生える。


【A】タイプ

ヒメジソ ほぼ無毛 トップ 萼・葉裏・葉柄裏・茎の節の毛が短毛で目立たず印象としてはほぼ無毛に見える。果実期に肥大する萼は上片の切れ込みが浅く、切れ込みがないものもわりとある。萼等の紫の染まり方が先端からかなりゆっくり起き、結実の方がずっと早い。各部が赤みのある褐色に染まりながら真冬まで裸地で吹きさらしの中咲いている。その上こちらに多毛タイプは見られないので、【B】より寒さに適応しているのかもしれない。

このタイプには匂いがないものとあるものとが見られる。

全景と花の様子

ヒメジソ ほぼ無毛 全景 失礼な話だが…極めて「普通」な印象。目立った特長というと、ヒメジソ類共通の、葉がやたら外にやや上に開いて伸びていて葉柄が長いことくらい。何かしらの違和感もない。全体にスマートな印象。
フラッシュのせいで萼の毛が少し目立つが肉眼では基本的に気にならない。ほとんど無毛に見える。萼後方にある最も毛の長い部位で0.7mm程度の短毛。

葉の様子・茎の節

ヒメジソ ほぼ無毛 葉 ヒメジソ ほぼ無毛 葉裏 卵形から長卵形、たまに最太部がやや中央近くになって印象が菱形。最太部から前方で辺はやや湾曲し卵状。
鋸歯は4から7で大抵6低めで鋸歯の後辺は葉縁にやや沿うように湾曲、また、後辺基部からすぐのところで急激に湾曲する部分があるものが多め。前辺は丁度横方向90度程度に向いている。
表面は無毛裏面は脈上に短毛があるがあまり目立たない1mmない程度なので一応肉眼でも普通に確認はできるレベル。
腺点と脈がかなり目立つ
葉柄には表裏ともに脈上に開出した短毛があるが目立たない。また、腺点は目立つ。

ヒメジソ ほぼ無毛 葉 ヒメジソ ほぼ無毛 葉表の拡大 ヒメジソ ほぼ無毛 葉裏の拡大
ヒメジソ ほぼ無毛 茎の節 節には短毛が環状で草体全体では最も目立つ部位ではあるが注意して見ないと気にならない。色もあまり白っぽくないのでその意味でも目立たない。
稜の毛も短毛でまばらに目立たず生える。

果実期の花序と萼・分果の様子

ヒメジソ ほぼ無毛 果実期 ヒメジソ ほぼ無毛 萼 ヒメジソ ほぼ無毛 萼
ヒメジソ ほぼ無毛 萼 結構大きく肥大する。鋭い印象が少なくころんとしてわりとかわいらしい。
果実期の萼は上片の反りを伸ばすと5.5mmから6.5mm程度。
上片はかなり浅く、切れ込みが120度くらいある。中央片は裂片基部と頂点を結ぶと頂点120度程度の広い三角形になるものが多め、中央片そのものがないものも結構見られる
萼の変色は遅く、分果が黒熟する頃にまだのものが多い。先端縁等部分的に染まってさっさと枯れて明るい褐色に乾いていくものも多い。【B】タイプより花期自体が遅いのでこの時期の環境(気温・湿度)の都合かもしれない。

ヒメジソ ほぼ無毛 果実 基部側が狭い、倒卵形、一面やや平らな部分がある。高さは1.2mmから1.5mm程度、径は1mmから1.2mm程度。
基部側は少し白っぽく円形になっていてその周囲に脈がリング状。
それ以外は脈が網目状に走り面部分は平坦な卵形の表面のまま網だけが脈として浮き出ている状態で、イヌコウジュの分果の「干しブドウのように面部分と網目部分の境が湾曲して全体が窪むもの」とは異なる。
網の辺はほぼ直線なので中は多角形になる。
クレーター状の腺点が多くありそこに色のない油成分?が浮いているので、フラッシュ+ルーペで超接写撮影するときらきらする。

冬にかけての個体

ヒメジソ 晩秋からの花 ヒメジソ 晩秋からの葉 形態変異しているわけではなく、普通の個体が晩秋以降はこのようになる。
花はイヌコウジュと同程度の小さなものになり、色もほぼ全体に入るが、イヌコウジュの鮮やかな染まりとは異なる。


花確認:
2007(F9)(F10)
2008(F9)(F10)(F11)
2009(F9)(F10)
2010(F10)
実確認:
2007(C9)(C10)(C11)
2008(C10)(C10)(C11)

【B】繊細・やや日陰に多いタイプ(多毛・少毛あり)

ヒメジソ 多毛 トップ 全体のシルエット自体はほとんど【A】タイプと変わらないが、少し幅広の葉が目立つ。鋸歯も異なる。
大きく異なる特徴は、匂いと各所の毛。はっきりとした多毛のものとAと変わらないもの、中間的なものとが見られるが、どの毛の量でも毛は長め。(写真サンプルは多毛のものをチョイス。多毛でこれ(萼部だけが異様に多く他の部分は大してない。)なので、シラゲヒメジソそのものではない感じではある。)
匂いはビーフステーキ系で、結構いい匂い
葉裏と葉柄裏の脈上・茎の節・花序軸の節・茎の稜・萼に長白軟毛があり、目立つ。
また、【A】タイプと比べて紫に変わるタイミングがステージ的に早く分果の青白い時期にかなり色が変わっている
また、花期が少し早く、数週間は異なる模様。(終わるのも早いので、寒くなってから咲く小さな花が滅多にない。)
冬には枯れている。毛があること・冬に枯れていること・染まりやすいことを考えると、【A】よりも寒さに弱いのかもしれない。


このタイプに見えるものは、シラゲヒメジソか、それに近いものか、もしくはそれとの雑種かもしれない。
なお、ものすごく毛が顕著で分かりやすい、典型的な姿の「シラゲヒメジソ」は、ネットでお世話になってる「よしゆき」さんとこに掲載があるので参照されるとよいと思う。(連絡先が分からないのでリンクは張らない。検索サイトで「花図鑑 サイクリング日記」とでも検索すればすぐ出てくると思うので、そちらで。)
(私も参考用にローカルのスクラップブックに丸ごと保存済み。)

全景と花序・花の様子

ヒメジソ 多毛 全景 ヒメジソ 多毛 花序 ヒメジソ 多毛 花
萼と、花序軸の節部分に長白軟毛が輝く。とてつもなく目立つので気になってしょうがない。
尚、【A】タイプと混生していても花序軸のところどころの紫褐色の染まりが目立ち毛以外にもぱっと見て違う場合が多い。(混生していない場合環境差が出るので手がかりにもならないが。)
花は花期が早い分白いものが多い。段々遅い時期になると少しずつ紫味が強めなものが咲くのだが、その頃にはこちらのタイプはほとんど終わっているので白くないものを見られることは少ない。
萼後部の最も毛の長い部分では1.5mmから2mm程度ある。これだけ長ければ目立って当然か。

葉の様子

ヒメジソ 多毛 葉 ヒメジソ 多毛 葉裏 ヒメジソ 多毛 葉裏
葉形は基本的に少し広めで卵形から広卵形、たまに長卵形。全体に【A】より太身なものが多い。最太部から前方で辺はやや直線的で三角形。(上部の葉は丸っこくなるので結構【A】に似てくる。)
最太部の後方は、弱い円形がくさび形に移行しかけているような形状、最基部付近で急に角度が変わりやや緩やかに葉柄に流れる5mm位の部分がある。(共通)
鋸歯は4から7で大抵5、6で少な目のものが多い鋸歯は大きく荒々しく、鋸歯の後辺は湾曲が少なく前辺も斜め前方に向かい鋸歯は斜め前方に向いているのがはっきり分かる。
ヒメジソ 多毛 葉 ヒメジソ 多毛 葉裏 ヒメジソ 多毛 葉の拡大
ヒメジソ 多毛 葉裏の拡大 葉の表面は多くは一見無毛だが、肉眼で見える伏した白い毛が確認できるものもある上、見た目で毛のないものも、混生場所で同時に泥水を被って乾いた後、こちらだけが白く泥だらけでずっと残る上、質感がのっぺりしている点もあるので、微細な毛がかなり生えているのかもしれない。
上段左の写真の囲みは表面の毛を拡大したもの。あまりきちんと写らなかったのだがまぁ一応写ったので掲載。
裏面では脈上に開出した長白軟毛があり極めて目立つ。横から草体全景を撮影した際にも下に毛が垂れているのが目立つ。
裏面も【A】よりのっぺりした感じで、腺点も脈も【A】と比べるとあまり目立たない
(ただし標本同士では圧がかかって潰れているので立体感は失われ比較しても分からない。注意。)
葉柄では表裏とも脈上に開出した長白軟毛がある。腺点はあるが葉裏同様それほど目立たない。

ヒメジソ 多毛 茎節・葉柄の毛 茎の節には長白軟毛が環状にぱっと見て目立つ。稜でも下向きに屈曲した長白軟毛がやや目立つ。

果実期の様子と萼・分果の様子

ヒメジソ 多毛 果実期 ヒメジソ 多毛 ほぼ無毛との果実期比較 左の写真はこのタイプのもの、右の写真は、このタイプと【A】タイプが混生しているので比較撮影したもの。
圧倒的に異なるが、写真で伝わるかどうかは少し疑問だったりする。…。

ヒメジソ 多毛 萼 ヒメジソ 多毛 萼 ヒメジソ 多毛 萼
果実期の肥大した萼は周辺の群落の各形態のヒメジソ類の中で最も大きく、上片の反りを伸ばすと7mmから7.5mm程度、たまに8mm程度。
上片の切れ込みが少し深く、はっきりしている。中央片は裂片基部と頂点を結ぶと正三角形になる程度。
中央片の辺は湾曲している。また、左右片の辺は微弱なS字湾曲。
萼はかなり早期に明るい渋赤紫に変色し、乾いて枯れるより前にほぼ全体が染まるのが普通分果が熟す前に染まっている。
その上花期が最も早い点もあるので、混生時にはかなり他との色の違いが目立つ。

ヒメジソ 多毛 果実 分果は基部側が狭い倒卵形で、一面やや潰れて平らな部分がある。
高さは1.2mmから1.5mm程度、径は1mmから1.2mm程度。イヌコウジュより大きい。
基部側は少し白っぽく円形になっていてその周囲に脈がリング状になり、それ以外は脈が網目状に走り面部分は平坦な卵形の表面のまま網だけが脈として浮き出ている状態で、イヌコウジュの分果の「干しブドウのように面部分と網目部分の境が湾曲して全体が窪むもの」とは異なる。
網の辺はほぼ直線なので中は多角形になる。
クレーター状の腺点が多くありそこに色のない油成分?が浮いているので、フラッシュ+ルーペで超接写撮影するときらきらする。
網目を形成する脈は【A】タイプより少し太いかもしれない。分果についてはそれほどは数を見ていないので厳密には不明。

分果の拡大写真追加

ヒメジソ 果実 200mmズームのコンパクトカメラに7倍ルーペと5倍ルーペを組み合わせたものを接続、マクロ三脚で位置を固定した上でピントを36段階で変更して撮影しまくったものを深度合成した画像。
なお、36枚ともRAW撮影をしておいて現像ソフトで色収差をゲージで可能な限界まで補正しつつ一番きれいな状態で出力したファイルなものの、数%しか収差は補正できていないので、それを合成した結果もまぁこの程度。これだけ見やすくできれば御の字と自分を納得させるしかない。


花確認:
2007(F9)(F10)
2008(F9)(F10)
2010(F10)
実確認:
2007(C9)(C10)(C11)
2008(C10)(C11)

宮城県版のイヌコウジュ属
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